マイナンバー制度と帰化(3)
- 松本 良太
- 2015年12月16日
- 読了時間: 4分

前回の投稿でもご紹介したように、
マイナンバーが使用される範囲は法律(番号法)で限定されているため、
この制度自体が帰化やビザの審査に直接影響を与えることは考えにくいです。
しかし、
不安の声としてよく聞くのが、
「入管や法務局が申請人のマイナンバーをある特定の機関に照会することで、
過去の納税状態や社会保険加入状況等の個人情報を簡単に閲覧できるのではないか??」
というものです。
果たして上記のように、
マイナンバー制度の導入により、
これまで各行政機関等が保有していた個人情報が特定の機関に集約され、
これを閲覧することができる『一元管理』の仕組みができたのでしょうか??
答えは「NO」です。
制度導入後も、
従来どおり個人情報は各行政機関等が保有し、
他の機関が保有する個人情報が必要となった場合には、
番号法で定められた特定の事務に限り、
情報提供ネットワークシステムを使用して、
情報の照会・提供を行うことができる『分散管理』の方法をとっています。
(しかも、照会にはマイナンバー自体は使用されず、
それに代わる「符号」を用いて情報が連携される仕組みとなっています。)
仮に、
共有の大きなデータベースのようなものをつくって、
全住民の個人情報がそこで『一元管理』されたとしましょう。
そこでもし、
大災害や故障、サイバーテロ等にみまわれ、
そのデータベースが破壊されてしまったらどうなりますか?
想像するだけでも恐ろしい、
「消えた年金問題」どころの騒ぎじゃありませんよね・・・。
だからこそ、
そのリスクを避けるために『分散管理』という方法がとられているのですね。
もちろん、
前回もご説明したように、
上記の「特定の事務」に帰化やビザの審査事務は含まれていません。
したがって、
最初にご紹介した不安の声は杞憂(きゆう)ということになりますね。
ただし!
直接ではないにせよ、
帰化審査上(ビザも同様)、まったく関係ないと油断することはできません。
その大きな理由は、『税務調査』にあります。
ご存知のとおり、
国税庁(税務署)は納税者の銀行の取引履歴等を照会し、
不正なお金の流れや脱税がないか目を光らせています。
マイナンバー制度の導入によって、
この『税務調査』が今後より強化・遂行されると専門家たちは指摘しています。
実際に2018年からは(任意ではあるものの)、
マイナンバーによる預貯金口座への紐付けもはじまります。
(将来的には紐付けが義務化する可能性もあるようです。)
つまり、
上記基盤が整備されることによりお金の流れをより明瞭に把握できるため、
その分ゴマカシや資産隠しが通用しなくなるということですね。
日本の税務当局は、
所得は把握できても、資産は十分に把握することができていないとしばしば指摘されてきました。
マイナンバー制度の裏側には、そんな意図も隠されているようです。
話が少々それてしまいましたが、
帰化の相談者のなかには、
給与収入の他に不動産収入やオークション収入等の副収入があるにも関わらず、
確定申告その他必要な税務処理をしていないケースがよくあります。
これまではもしかしたら見逃されていたかもしれません。
しかし、
先に述べたとおり、これからはそう甘くはなさそうです。
もちろん、
税務手続きに限らず、
法律上定めされたルールを守って在留することはマイナンバー制度以前に大切であることに違いはありません。
また、制度自体もまだ導入されたばかりであるため、
当然ながらただちに税務調査が厳しくなるというわけではありません。
でも、
備えあれば憂いなしです。
もし上記手続き漏れにお心当たりがある方は、
これを機に確認しなおすことをお勧めします。
※これまで『マイナンバー制度と帰化』というテーマで3回にわたって連載してきましたが、
なにせ制度自体がはじまったばかりなので、まだわからないことだらけなのが正直なところです。
今回の連載で当制度の概要だけは少しお伝えできたかと思いますので、
連載自体は今回でいったん終了とさせていただきます。
また新着情報があれば随時ご紹介させていただきます!
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